ラヴェルのバレエ音楽
新年明けましておめでとうございます。
いよいよ新しい一年を迎えました。
今年も皆さんと一緒に音楽を楽しみながらレッスンができたらと思います。
私の地元は新潟なのですが、冬は雪がたくさん降り、晴れる日がほとんどなくずっと曇っています。
東京はいいお天気かと思いますが、元気を出したい時に効く曲を紹介させていただきます。
ラヴェル 「ダフニスとクロエ」
モーリス・ラヴェル(Maurice Ravel, 1875- 1937年)は、フランスの作曲家であり、20世紀前半を代表する音楽家の一人です。
『ダフニスとクロエ』1912年にバレエ•リュス(ロシア・バレエ団)によって初演され、バレエのためにラヴェルが作曲しました。
この曲はラヴェルの傑作の一つとして高く評価され、バレエ音楽全曲や作曲者自身による組曲がオーケストラの重要なレパートリーの一つとなっています。
特に『ダフニスとクロエ 第2組曲』は、ラヴェルが作曲に1年を費やした終幕の「全員の踊り」を含む第3場の音楽をほとんどそのまま抜き出したもので、この形での演奏頻度が高いです。
晩年のラヴェルは原因不明の脳の疾患と、交通事故にあってしまった影響もあり意識は明晰であるにもかかわらず文章を書いたり音楽を楽譜に記したりすることが全くできなくなり、記憶障害にも悩まされていました。
死の数か月前、 演奏会で『ダフニス』を聴いたときのラヴェルの様子を、同行していた友人は次のように回想しています。
晩年病に倒れて仕事の不振に打ちのめされていたとき、かれは好んで初期の作品をくり返し聞いた。かれが最後に《ダフニス》を聞いたとき、ひどく感動し、さっとホールを出て私を自動車のところへ引っぱっていき、そして静かに泣いた。「あれはやっぱりいい曲だった!ぼくの頭のなかにはまだいっぱい音楽があったのに!」 私はなんとかしてかれを慰めたかったので、かれの音楽はすばらしい、完璧だ、と言ったのだが、かれは憤然として答えた。「とんでもない、とんでもないよ。ぼくは言いたいことをまだなにも云ってないんだ……」
— エレーヌ・ジョルダン=モランジュ著、安川加寿子・嘉乃海隆子共訳『ラヴェルと私たち』、56-57頁
彼の最後の数年間は孤独と沈黙の中にありました。
記憶が曖昧になった後の本人でも「いい曲だった」と思える作品とはどんなものなのでしょうか。
「管弦楽の魔術師」と呼ばれたラヴェルの色彩と緻密さが生み出す魔法のような音楽をぜひ聞いてみてください。
田村